家は今買うべきか、待つべきか——金利が上がり始めた2026年、そればかり考えて1年が過ぎた。この記事は「待てば安くなる」とも「今すぐ買え」とも言わない。金利・物件価格・年齢の3つの軸を、35歳と45歳のケースで具体的に試算して、判断材料を組み立てるための整理。同じく決めきれずにいる人向けに、週末SEが調べた事実とその読み方をまとめた。
先に結論:「待てば得」とは限らない。決め手は3つの軸
迷っている人がいちばん欲しいのは「今が買い時か」のYES/NOだと思う。でも、それを断言する記事はだいたい何かを売りたいだけ。金利の先行きは誰にも分からない。だから結論はこう。
- 金利:いま借りる人の多くは変動。ただし固定へ動き始めた人もいる=「上がるかも」が現実の選択に出てきた
- 物件価格:高止まり。ただし上がり続けるかは限界の予兆もある
- 年齢:35年で借りると完済は75〜80歳。35歳と45歳では「待つ」損得が逆転する(後述)
値上がりや金利を当てにいくのは博打。以下、軸ごとに、35歳・45歳の具体ケースで見ていく。
「今買うか待つか」で1年固まった自分
不動産会社からの物件紹介がどんどん溜まっていく1年だった。物件価格や金利のニュースを見るたびにそわそわ反応して、「もう少し待てば」と先送りする。転職する気も半分残っている身(転職で家が買えなくなるか、家を買う前か後かは別記事に書いた)だと、ローンという固定費はなおさら重い。
週末SEらしく、感情で決める前に数字を並べることにした。判断を「気分」から「材料」に変えるだけでも、ソワソワはだいぶ減る。
軸1:金利——みんな変動、でも固定へ動き始めた
住宅金融支援機構(JHF)の住宅ローン利用者調査(2026年1月)では、これから借りる人の金利タイプはこんな内訳になっている。
4人に3人が変動。ここだけ見ると「みんな変動なら変動でいいか」となる。でも本当の注目点は変化の向き。変動の割合は前回調査から下がり、固定系が増えている。背景は、長期金利の上昇でフラット35(全期間固定)が3.21%まで上がり、制度として初めて3%を超えたこと。「変動が一番安い」は今も事実だけど、「ずっと安いまま」とは限らない空気が、実際の選択に出始めている。
ここで大事なのは、金利が上がるかどうかを当てにいかないこと。上がる前提で固定に振るのも、上がらない前提で変動に振るのも、どちらも予想。予想ではなく「上がっても返せるか」で考える方が安全(その耐性の作り方は返済シミュ編で数字にした)。
金利の見通しは時期・金融機関で変わる。ここで挙げた数字も2026年前半時点のもの。最新は各行・JHFの公式情報で確認を。
軸2:物件価格——高止まり、でも「限界の予兆」もある
「待てば安くなるのでは」の根拠になりがちなのが物件価格。国土交通省の不動産価格指数を見ると、住宅は2020年以降ほぼ一貫して上昇していて、足元でも大きく下げてはいない。用地の取り合い・資材高・人手不足の人件費が効いていて、すぐ下がる要素は見えにくい。
とくに都市部は突出している。モゲチェックの診断データだと、借入希望額は全国平均が約5,000万円台なのに対し、東京は7,000万円台。新築が高すぎて中古に流れる動きも出ている。
ただ「ずっと上がり続ける」とも言い切れない。年収が高めの層の借入額の中央値は2022〜23年あたりがピークで、2024年は減っている。「これ以上は払えない」という限界に近づいた、という見方もできる。高止まりは事実、でも天井が近い可能性もある——どちらに賭けるかではなく、「今の価格でも自分の家計が回るか」で見るのが現実的だと思う。
軸3:年齢——35歳と45歳で「待つ損得」が逆転する
金利と価格は外の話。最後は自分側の話で、ここがいちばん効いた。
多くの金融機関で、住宅ローンの完済時年齢の上限は75〜80歳。返済期間も「30年超〜35年以内」が最多。つまり何歳で借りるかで、そもそも選べる返済期間が変わる。完済80歳を上限に、35年ローンを2つのケースで見てみる。
- 35歳で借りる:完済70歳。2年待って37歳で借りても完済72歳で、35年フルが組める。返済期間の自由度が高い
- 45歳で借りる:完済80歳でギリギリ。2年待つと47歳→完済82歳で35年が組めない。完済80歳に収めるなら借入は最長33年に縮み、毎月の返済額が上がる
同じ「2年待つ」でも、35歳には余裕があり、45歳には期限が迫る。年収に対する借入額の目安は35年で5〜7倍以内と言われるが、45歳寄りの人は期間が削れる分、この枠もきつくなる。子育て中なら教育費のピークと返済の重なりも要チェック。
この「年齢で選べる期間が変わる」前提を踏まえて、よく出る「もう少し頭金を貯めてから」を数字にしてみる。
頭金を1〜2年で増やすと、ローンはどれだけ軽くなるか
「待つ理由」でいちばん数字が出やすいのが頭金。1〜2年待って頭金を500万・1000万増やせると、その後の返済がどれだけ変わるか試算した(元利均等・ボーナス払いなし・2026年前半の金利・概算)。頭金で借入が減った分、月返済はまるごと軽くなる。
月返済の削減額
| 頭金を増やす額 | 変動1.0%・15年 | 固定3.2%・15年 | 変動1.0%・35年 | 固定3.2%・35年 |
|---|---|---|---|---|
| +500万 | 約−29,900円 | 約−35,000円 | 約−14,100円 | 約−19,800円 |
| +1,000万 | 約−59,800円 | 約−70,000円 | 約−28,200円 | 約−39,600円 |
利息も含めた総返済の削減額を、③でやった「15年で完済」と「35年で長く」の2パターンで見るとこうなる。
| 頭金を増やす額 | 変動1.0%・15年 | 固定3.2%・15年 | 変動1.0%・35年 | 固定3.2%・35年 |
|---|---|---|---|---|
| +500万 | 約−540万 | 約−630万 | 約−590万 | 約−830万 |
| +1,000万 | 約−1,080万 | 約−1,260万 | 約−1,190万 | 約−1,660万 |
読み取りのポイントは2つ。
- 15年は毎月が軽くなる、35年は生涯の利息が軽くなる。固定3.2%・頭金1000万なら、15年は月7万円も軽くなるが総額の減りは約1,260万。35年は月約4万円の軽さでも、消える利息が多く総額は約1,660万減る
- 元のローンが小さいほど、頭金1000万の割合インパクトは大きい。固定3.2%・35年で月約−39,600円は、3000万ローンの月返済の約33%・5000万の約20%・7000万の約14%にあたる。3000万を組む層ほど頭金1000万はよく効く
ただし、ここで軸3の年齢が効いてくる。頭金を増やすために1〜2年待てるのは35歳寄りまで。45歳寄りの人が待つと、頭金で減らした分を「35年が組めず期間短縮で月返済が上がる」分が食い、さらに待つ間の家賃も出ていく。頭金で待つ価値があるのは、年齢に余裕がある人——これが「相殺」の正体。
で、結局どうするか——「待つ理由」を1つずつ潰す
3つの軸を並べたうえで、自分が使っている決め方はシンプル。「待つ理由」を1つずつ事実で潰せるかを見る。
- 「金利が下がるかも」→ 下がる根拠はある?無ければ待つ理由にならない
- 「物件が安くなるかも」→ 下がる予兆はある?高止まり前提なら待っても同じ
- 「もう少し頭金を貯めてから」→ 唯一、待つ価値が数字で出る理由(上の頭金シミュ)。ただし45歳寄りなら借入期間が削れる分と相殺。35歳寄りなら待つ価値は残る
3つとも「予想に賭けている」だけなら、待っても判断材料は増えない。逆に頭金や家計の見通しという自分で動かせる理由が残っているなら、そこが整うまで待つのは合理的。要は「相場待ち」か「準備待ち」かを切り分ける、ということ。
自分の正確な借入可能額や毎月の返済額は、ネットの早見表より個別に出した方が早い。金利タイプの比較や、第三者にローンを整理してもらう無料相談を使うと、感情の先送りから「数字で決める」に切り替えやすい。
3つの結論
最後に、1年迷ってたどり着いた持ち帰りを3つ。
- 「待てば得」は予想に賭けているだけ。金利も価格も先は読めない。読めないものを判断の土台にしない
- 決め手は外(相場)ではなく内(家計と年齢)。今の価格・今の金利で家計が回り、完済年齢が現実的なら、それは「今動ける」サイン
- 待つなら「準備待ち」に限る。頭金や見通しという自分で動かせる理由があるうちはいい。「なんとなく不安だから」で先送りすると、年齢の分だけ条件は厳しくなる
家は人生最大の買い物で、正解は人によって違う。だからこそ「気分」で決めず、相場ではなく家計と年齢——自分で動かせるものさし——で考えてほしい。それが、1年ぶん物件紹介を溜め続けた人間からの本音。
参考・出典(公式・一次情報)
- 住宅金融支援機構(JHF)「住宅ローン利用者調査」 — https://www.jhf.go.jp/about/research/loan_user.html
- 【フラット35】金利情報 — https://www.flat35.com/
- 国土交通省「不動産価格指数」 — https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- モゲチェック(地域別借入額・金利動向) — https://mogecheck.jp/articles/show/51rzNy7XEJ5o4mQ6ZkVv
- ダイヤモンド不動産研究所(金利動向) — https://diamond-fudosan.jp/articles/-/132585
※本記事は2026年前半時点の公開情報を整理したもの。金利・制度・価格は時期や金融機関で変わる。最終的な判断は各社の公式情報・公式シミュレーター・専門家への相談で確認を。投資・購入の結果を保証するものではない。